都市と農村  

 

自然敵対型の農林水産業から自然順応型の農林水産業へ 

 

農業軽視の倭国日本では、一九八〇年に四六六万戸もあった農家が、二〇一〇年は約一六三万戸、三分の一に減少している。農業就業人口は同じ期間に六九七万人から二六〇万人と、これも三分の一近くに減少している。倭国日本の食糧自給率は、いまや四〇パーセントを切り、穀物の純輸入量(輸入量-輸出量)は二五二九万トンと二位のスペインの二倍にもなっている。圧倒的な食糧収奪国に堕している。

農山漁村は過疎現象が進行し、耕作放棄地が拡大し、空き家が増加、公共施設の維持も困難になっている。伝統文化の衰退、相互扶助機能の低下、森林の荒廃、獣害・病虫害の発生が深刻化している。集落そのものが、消滅の危機に立たされているところも出てきている。

農林水産業を基幹産業と位置付け、食糧自給率を二〇五〇年頃までに七〇パーセントに高める必要がある。このために農業の関税を撤廃し、日本の農業を破滅に追いやるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)には徹底して反対する。TPPはアメリカ政府とアメリカ巨大資本の利益を拡大するための協定にすぎない。日本でTPPの利益にあずかるのは、輸出で潤っている巨大多国籍企業とそれに連なる政治家、官僚、学者だけである。

農水省の予算配分を見直し、農林水産業への労働力の流入を促進する。失業者、退職者、生活保護受給者、大都市の大震災被災想定地域住民も、農山漁村へ優先的に受け入れる。これらの新規就農者と過疎地住民によるクリルタイ共同社会を形成する。そのために都市と地方の自治体が支援する。このような流れを促進するよう法律を改正する。

エネルギー浪費型の農林水産業を自然順応型へ転換する。石油化学製品である農薬や化学肥料に依存した近代農法から、自然と調和した伝統農法、緑肥被覆作物農法、有機農法、自然農法に転換する。家庭菜園、学校農園、職場農園、クリルタイ農園でこれらの農法を学習し実践する。

農業学校、林業学校、水産学校をより充実させ、農業、林業、漁業の新たな後継者を育てる。農林水産業における有害な薬物の使用を禁止する。畜産業での有害な薬物の使用を禁止する。畜産業から農林業への転換を促す。薬物や人工のエサに依存する養殖業を転換する。日本は世界中のエネルギー浪費型の農林水産業を自然順応型へ転換する手助けをすべきである。

林業においては、保水性がなく、すぐに倒木して、水害を引き起こすスギ、ヒノキなどの単一人工林から落葉広葉樹林に転換する。生命の宝庫である世界の熱帯雨林の伐採禁止、全面復活を呼び掛ける。

 

「丑寅日本国古事抄」[諸翁聞取帳]

「アラハバキ、イシカホノリ、ガコカムイと唱(とな)え奉(たてまつ)る古い時代のカミガミは、宇宙にあるすべて、大地に続く地界のすべて、海、河、湖、川、沼、水に注ぐ雪雨の一切、水というものになれる一切をこのように唱えるのである」

 

各地で自然調和型の里山、里地、里海の復活へ 

 

倭国日本における過疎地域の人口は、減少し続けている。高度成長期の一九六〇年の過疎地域人口は、一七七一万人で、全人口の一八・九%であったが、二〇〇五年には一〇七四万人、八・四%になっている。しかもこの地域の六五歳以上の高齢者比率は、約三〇%に高まっている。逆に一五歳から二九歳までの若年者比率は、約一三%に低下している。これらの地域は、面積では国土の半分以上を占める、自然の豊かな地域である。その地域に適合した里山、里地、里海生活を取り戻す必要がある。そのためには地道な取り組みも必要である。

たとえば農村の雑木林、鎮守の森、里山を保護、復活する。里山の薪、木材、山菜、きのこ、野草、薬草、緑肥、間伐材、湧水の適度な利用を促す。里地の民家、空き家、井戸水、水田、棚田、減反水田、畑、小川、湖沼、溜め池、雨水、淡水魚の適度な利用を促す。里海の海産物、魚釣り、潮干狩り、海水浴、民宿、観光としての適度な利用を促す。

たとえば都市市民との交流・協働、田舎暮らし体験ツアー、田植え・稲刈り体験、米作り塾、森林体験、森林演習、自然体験、ホタル観賞、炭焼き体験、陶芸工房、竹細工、木工、ソバ打ち体験、里山体験移住、農家民宿などが、推奨、推進されるのは好ましい。

たとえば地域文化の尊重と振興、都市と農山漁村の二地域居住者、都市と農林漁村の姉妹都市交流、農村生活体験、親子ずれキャンプ、農産物、手工品の直販朝市や道の駅の活用、近隣都市商店街との連携、地場産業の保護育成、特産品の開発と販売促進、渓流釣り、生活環境の整備などが、推奨、推進されるのは好ましい。

たとえば太陽光発電、風力発電、バイオマス、水車など地産地消の自然エネルギーの活

用が、はかられなければならない。耕作放棄地の活用、有機農産物・自然農産物の生産・販売、味噌、醤油、豆腐などの自給のための大豆の栽培、減反水田の利用、薬草ハーブ栽培、カエデからのメイプルシロップ生産などが、推奨、推進されるのは好ましい。

たとえば過疎地域自立促進特別措置法の改良と活用で、施設の整備などハード面だけではなく、人材の育成、移住者の支援など、ソフト面の充実、国、自治体の支援措置の強化などがなされるのは好ましい。これらのこまごまとした政策をクリルタイ社会復活の第一歩とすべきであろう。

イノシシ、ニホンカモシカ、ツキノワグマ、ニホンサル、カラスなどの鳥獣害は、彼らのエサの乏しい、スギやヒノキなどの単一の人工樹林がもたらしたものであり、彼らの食べ物が豊かな本来の森林、山河生態系を回復すれば、鳥獣害を減少させることができる。

 

「北鑑 第二十一巻」

「天地水のなかに、父母をして世に生まれ、生死を輪廻とするのは、万有の生命にあるものの法則である。カミとは自然のことであり、過去、現代、未来において、この世から去ったもの、現代に生息するもの、そしてこれから末代に生まれてくるものは、一系にして生死をもって三界にある生命であり、これはカミの法則である」

 

自然優先、地球優先、原生林優先の林野行政へ 

 

立法、行政、司法機関は、住民の意志、自然の代弁者の意志を尊重する機関として再編し直す。国会は衆議院と参議院を廃止し、人間院と自然院の二院制とし、定数は同数とする。自然院は自然の代弁者によって構成される。人間院の半数は子どもの代弁者たる女性に振り分ける。国会は特定の利益集団の代弁者ではなく、自然の意志、住民の意志、女性の意志、子どもの意志を下から上へ反映する機関とする。行政機関も司法機関も自然優先、地球優先の方向へ転換する。

戦後日本の林政は、成長が早いということだけで、自然生態系を無視して、スギ、ヒノキなどの人工林を形成してきた。これが大きな国土破壊の原因になった。熱帯ではユーカリ、ラジアータパイン(チリ松)などの人工林を形成してきた。このような林政は、森林の水源涵養能力を低下させ、保水能力を低下させ、土砂災害、洪水災害を助長してきた。花粉症の原因にもなっている。伐採された森林はもともとあった、原生林、森林生態系に再生する必要がある。森林再生担当する部局を林野庁から自然再生省に移行して、日本列島全体で、日本の本来のブナ林など、この列島の風土に適合した落葉広葉樹の森林生態系を復活する。

日本の国産材供給量は最近、増加傾向にあり、木材自給率は幾分高まってはいるが、依然として三〇%前後にすぎない。森林王国であるはずの日本は、木材の自給率も大幅に高めて、木材の輸入量を大幅に縮小させなければならない。製材、パルプ、チップ、合板などの需要を大幅に抑制しなければならない。日本の林政は、人工林重視、生産性重視から生態系重視、原生林重視の方向へ転換しなければならない。

豊かな落葉広葉樹林は、豊かな恵みと水源を涵養し、野生生物をよみがえらせ、水害を予防し、田畑に養分を供給し、海を豊かにする。山地でも農村でも都市でも植林を尊重し、その土地の風土にあった森林を形成する。紙、パルプなどの浪費を抑制し、海外からの木材の輸入、森林伐採を抑制する。原生林の伐採は、全地球的に全面禁止する。世界の軍隊を縮小し、地球奉仕隊を結成、世界各地の原生林の再生に取り組む。

 

「北鑑 第十巻」「日之本国の民の誓い」

「天然自然を汚すべきではない。むやみに生き物の生命を傷つけてはならない」

「水を一滴たりとも大事にすべきである」

「天地水こそカミであり、人が造った像はカミではない」

 

地産地消の分散型自然エネルギーの開発へ 

 

世界でまれにみる多様な生態系を持つ日本列島は、世界で最も多様な自然エネルギー利用が可能であり、世界の自然エネルギー利用の模範となるべきである。その潜在的な自然エネルギーは無限に広がっている。にもかかわらず、政府と電力会社とそれに連なる勢力の妨害によって、倭国日本は自然エネルギーの導入に、大きな遅れをとっている。

当面、節電、省エネ対策技術の開発と並行して、風力、洋上風力、波力、潮力、潮流、小水力、水車、自然雪氷、地中熱、温度差エネルギー、海洋温度差発電、磁力、重力、太陽エネルギー(太陽光発電、太陽熱発電、太陽熱利用)など自然再生エネルギーの開発、使用を促進すべきである。画一的ではなく、その風土、気候、その地方にあった地産地消の分散型、自給型の自然エネルギー開発を推進、利用すべきである。どの自然エネルギーを利用するかは、その土地の自然条件を勘案し、地域の住民の意向を尊重する。

二〇三〇年までに、自然エネルギーの使用割合を七割までに高めるべきである。日本のエネルギー自給率も二〇三〇年までに七割までに高めるべきである。ちなみに、この一二年間に累積の風力発電の導入は、八・四倍に高まっている。

たとえば山間過疎地、中山間地などでは、河川の流れを利用した小水力発電、水車発電が可能であり、これは河川の生態系への負担の極めて少ない発電、コストのほとんどかからない発電であり、自然利用型、分散型、自給型、未来型発電である。太陽光、風力、バイオマスもまた、日本列島の風土では有力な自然エネルギー源となる。この場合、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を利用すべきである。この制度では小水力や太陽光、風力などで発電した電力を電力会社が買い取ることが義務付けられている。

東日本大震災で大地震、大津波、原発事故放射能の三重苦を背負った福島県南相馬市は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを二〇二〇年度には六五%に、三〇年度には一〇〇%にする目標を掲げている。ぜひとも目的達成に向けてまい進してもらいたいと考える。国も企業も個人も南相馬市を応援すべきである。

 

「北鑑 第二十二ノ二十四」

「我が奥州の国は、古くから人をして上下の級を造らず、一切平等なる事を人の道として睦みを保ってきた。人の生命は、天秤の水によってなり、カミなる善道心と心得て、天命の尊重を一義として、荒覇吐神の一統信仰を主旨とした」

 

各地で都市と農村の対立、分業の解消へ 

 

大都市、都市の市民を地方、農村、過疎地への分散を促し、その地域の風土にあった産業を創出し、雇用する。食糧だけでなく、衣料、住居、日用品も自給自足の方向へ誘導し、物流の量を少なくする。生産と消費を隣接化して、食糧、エネルギーの地産地消を促し、流通を簡素化する。インターネット等の利用によって、自宅の職場化、職場の自宅化をはかり、通勤とラッシュから解放する。仕事と労働と遊びの一体化によって、家族の絆、地区クリルタイの絆を強める。

家族の枠を超えた住宅シェア制も奨励されるべきである。これによって、共同生活と省エネルギーと人間的な結び付きを実現することが可能である。共生と協働によって人間の心身の健康を回復する。新たな人間関係を作り上げる。

退職者、失業者、生活保護者などから田舎暮らしの希望者を募り、農山漁村、過疎地へ移住してもらい、特にお年寄り世帯と共同生活をしながら、農林漁業を学ぶことも奨励されてしかるべきである。食糧とエネルギーの地産地消を行い、余剰の生産物を都市へ供給する。へき地の廃屋、廃校舎、中小都市の廃店舗、廃工場なども積極的に活用する。

想定される東海・東南海・南海三連動地震では、太平洋沿岸部を中心に、北は茨城県から南は沖縄県まで三〇都府県、三二万三〇〇〇人の死者、全壊、焼失する棟数二三八万軒という最大級の被害になるとみられている。これらの地域では高台移転も不可能な地域も少なくない。これらの地域住民に国、自治体支援の農山村過疎地域への個別的、集団的移転の可能性も検討されるべきである。

このような集団的移転の障害になるのは、農地法の「優良な農地の転用の不許可」という条項であり、これを改正すべきである。東日本大震災の復興事業においても、この農地法の規定によって、復興用地やソーラー用地に転用できない案件も出ている。これでは復興特区法も無意味となってしまう。農地法の改正を阻害している農水省、農業団体は厳しく批判されるべきである。

公共交通機関を優先し、自動車(バス、タクシー、自家用車)の乗り合い制を採用し、交通量を減らしていく。道路にはなるべく歩道、ハイキング道、自転車道、サイクリング道を確保し、土の道、けもの道も復活させる。エネルギーを大量消費し、オゾン層を破壊する大型ジェット機を規制する。エネルギーを大量浪費するリニア鉄道の建設を禁止する。高速道路、高速鉄道の建設を抑制する。

 

「北鑑 第二十八巻」

「たとえ王に選ばれても、民の生活の安住を導き、それをなしえない王は民の議決によって、これを辞めさせることができる。これは古代からの伝統である。王は律を作らず、民はこぞって律を定め、王はこれを執行する。よってこれこそ神の理にかなう信仰として、また、国治の理念とする」

 

地区、地域クリルタイの世界各地への創設へ 

 

地区クリルタイ(人口数千人規模)、地域クリルタイ(人口数万人規模)を創設し、全世界にも創設を呼び掛ける。クリルタイは会議を設けて協議し、必要な場合は執行者を定める。執行者は固定化せず、交替制がのぞましい。執行者は無償で執行するが、その活動はクリルタイ全体で支える。執行者の役割が終われば、クリルタイの一員に戻る。

いずれのクリルタイも固定した首長は作らない。原則的に執行者の世襲は許されない。地区クリルタイ、地域クリルタイは、新設される地方クリルタイ、連合クリルタイなどへ代表を派遣できる。クリルタイは直接民主主義を原則とし、各級議会、議員は廃止する。各クリルタイは自給自足体制を整えるとともに、自然再生活動を行う。困窮する人々を救援する義務を負う。

各クリルタイは災害、飢饉などが起こった地域に無償で支援するのが当然の義務となる。各クリルタイで生産された余剰食糧と余剰物資は、備蓄用を除いて、飢餓、貧困にあえぐ人々に無償で配布する。各クリルタイの決定・執行も、そのクリルタイが責任を持っておこない、他のクリルタイが干渉することはできない。万一、自分たちのクリルタイが災害、飢饉にあった場合は、他のクリルタイに必要な食糧、物資の無償の支援を要請することができる。各クリルタイは資源を浪費する、自然を破壊する過度な生産を行なわないようにする。こうして自然の再生を図っていく。

地区クリルタイ、地域クリルタイは、生活に関係のある取りきめは法律ではなく、掟、決まりごとを独自に決定する。明文化するかどうかは各クリルタイにまかせる。各クリルタイは独自のネットワークを形成する。各個人、各クリルタイは命令しない、命令されない。あくまでも自発的に行動する。

 

『東日流外三郡誌 第一巻』[東日流内三郡廟跡抄]

 「一族の内に対しては人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず、平等一途の暮らしをまかなった。よって一族の民に富貴なく、権力、位階なく、一人もこれを犯すことなく、掟(おきて)によって固く民の暮らしを守った」

 

地球共同社会はさまざまな分業制を縮小へ 

 

クリルタイの発祥地、古代シュメールの都市共同体国家では、職業も確固たる分業制はとられておらず、あるときは農民であり、あるときは職人であり、あるときは為政者であり、あるときは祭司でもあった。職業間の移動はごく普通に行われた。

可能な限り交替制が導入されるべきである。人々は社会の、会社の、工場の分業制から解放される。豊かで平等な社会では、分業制による効率化、高生産を追及する必要がなかった。また、職業の選択などにおいては、強制ではなく、自発性が尊重された。

分業は人間の能力を抹殺する。分業社会、競争社会では、人間は自らの潜在的な能力の万分の一も発揮できずにこの世を去る。それは不幸なことである。人間は社会の、会社の、工場の歯車になってしまう。人間の能力は機械と経営者と権力者によって吸いあげられる。国家、企業、政党、教団などの人工組織によって、人間は奴隷や家畜のようにされてしまう。

連帯性の自給自足のクリルタイ自治社会で、はじめて自由、平等、平和、共生が単なるスローガンから現実のものになる。人間の能力は無限に開かれていく。そのためには日々の自発的な研鑽が必要となる。

 

『東日流外三郡誌 第二巻』[安東律儀法度]

「一族の民をして、貧富の差や不平等があってはならず、武士、農奴、商人、漁師、工夫、僧侶、神職は、その暮らし方を異にするとしても、律義法度は鏡のように誤らず。善悪を審理し、これを裁判する」